わたしたち一人ひとりの可能性とチャンスを広げ、より豊かに生きるための知恵を身につける学びの場「ischool」。開講を記念して全2回のオープニングイベントを開催し、のべ500人以上が参加しました。
11月27日、生駒市がはじめる「ischool」のオープイングイベントとして、ミュージシャンの相川七瀬さんをお招きし、「大人の学び」をテーマにしたトークセッションを開催しました。
会場は北コミュニティセンターISTAはばたき。生駒市長の挨拶でイベントがスタート。
相川さんが舞台に登壇すると、会場の皆さんが赤いサイリウムを振って歓迎しました。赤は相川さんのイメージカラー。相川さんにもこの場を楽しんでもらおうと、この日のために、相川さんのファンが用意したものです。
「いろんなトークイベントに出ているけど、サイリウムで迎えてもらうのは初めてです」と、思わず笑みがこぼれる相川さん。
相川さんは、3人のお子さんを育てながら、國學院大學(こくがくいんだいがく)に通う現役の大学生です。高卒認定試験を経て、45歳で大学に入学。日本の伝統文化について学ぶ神道文化学部に在籍し、日本の歴史や伝統について学んでいます。
聞き手として登壇したのは、本市在住で、ベビーマッサージやカメラの教室を運営しながら、「子育てしやすい社会へ」をコンセプトとしたプロジェクト「Alright Baby」を手がける岩城はるみさんと、本市職員で、社会課題解決の専門家の中川悠。子育てと仕事を両立しながら、大学院にも在学しているという共通点のある二人です。
今回のトークセッションでは、大人が学ぶことの魅力や、それに対する家族の反応、私生活のリアルな様子や子育てのこだわりなど、相川さんにざっくばらんにお聞きしました。
まず、アーティストとして一線で活躍する相川さんが、40代で大学に入学した理由をたずねました。
「わたしの場合は、学びはじめてから、大学に進学するまでに5年ぐらいかかったんです。まずは、科目等履修制度を利用して大学の授業を受けてみたら、日本の古い歴史を学ぶことがどんどん面白いと感じるようになって、本格的に大学に入って学びたいと思うようになりました」
と話した相川さん。神道文化学部を選んだのは、祭りで地域を活性化したいという想いからでした。
「ライブで長崎県対馬市を訪れたとき、赤い稲穂の田んぼに偶然出会ったんです。それが、神事に使われる赤米でした。赤米文化を伝承していくために、赤米の祭りを通して地域を盛り上げようと活動する中で、自分に足りないことが、“学び”だと気づいたんです。祭りと神道の歴史について、学術的に学ぶために選んだのがこの学部です」
次に、大学を受験すると知ったときの家族の反応をお聞きしたところ、なんと、相川さんは大学に進学することを決めてから、家族に報告したのだそう。
「長男と一緒に勉強して、高卒認定試験はパスしたんですが、大学に行きたいっていうことはなかなか言えなかったんです。家族から”ママにできるの?”とネガティブな反応があったときに、”ママだって大学に行ける”って言えない弱い自分がいるような気がして。だから、大学受験の前の日に子どもたちには話しました」
この春から大学院生になった岩城さんが、ご自身の経験を踏まえて、40代から学ぶことの難しさを相川さんに相談すると、
「若い頃は聞くだけで覚えられたけど、今はそれでは記憶できない。ノートの書き方を工夫するようにして、覚え方を変えました」
相川さんにも、現役大学生ならではの悩みがありました。
また、40代になると、新しいことに挑戦するのが怖くなったり面倒になったりするのでは、という問いかけには、
「この年齢になると躊躇してしまうこともあるけど、とりあえずやってみたらいいと思うんです。失敗しても得られるものもありますよね。やってみることが大事なんじゃないかな」
と、思い切って行動することが大切だと伝えていました。
音楽活動や大学の勉強と、全国を飛び回る相川さんの日常は想像するだけでも大忙し。その中で、自分時間をつくるコツとしては、会場の皆さんもドキッとしてしまうような、するどい指摘がありました。
「時間は資産。この時間になにをするかで、明日からの自分が変わっていくと思うんです。大学生になって自分の時間を見直したんですが、ケータイのスクリーンタイムを見て驚きました。忙しいはずなのに、6時間もケータイを使っていた日があって!その時間を全部、学ぶことに変えたら、仕事も家事の時間も減らす必要がないって気づいたんです。それで、我が家では、思い切って子どもたちも全員、22時から6時までケータイをさわらない時間にしているんですよ」
と、相川さんが伝えると、
「大人は子どもたちにケータイばっかり見ちゃダメ!って言うけど、親自身がそれを実践できると、説得力がありますよね。わたしもやってみます」
岩城さんも笑顔で応えていました。
相川さんは学び直しをはじめてから、日々がとても充実しているのだそう。
「学びの魅力とは何かを改めて考えてみると、“新しい人間関係ができること”だと思うんです。既存の人間関係とは違うつながりが広がって、そこから新しい情報を得たり、今まで知らなかった自分に出会ったりすることができますよね。毎日がすごく楽しいです」
最後に、登壇者3人が、会場の皆さんに向けて、メッセージを送りました。
岩城さんは、「学びの魅力は、新しい人間関係ができること」という相川さんの言葉に共感し、
「“学び直し”という、気合の入った言葉を使わなくても、実は学びは身の回りにごろごろ転がっているもの。生駒というまちの中で新しい人間関係が広がっていって、その中でお互い学んだり、だれかの学びのきっかけになったりしていったら素敵ですよね」
とにこやかに話しました。
相川さんからは、仕事や家事、育児などで毎日忙しい皆さん、一人ひとりの背中を押すような温かいエールがありました。
「学ぶことを難しく考える必要はないんですよね。子どもから教えられること、職場の人から情報を仕入れることも、学びの一つ。そんな風に、学びは人を通してやってくるものだと思うんです。生駒市でischoolが立ち上がって、そこでまた新しい人間関係が広がって、自分の新しい扉が開いていって。それって素晴らしい機会ですよね。人生100年時代、ともに楽しい時間を過ごしていきましょう」
そして、
「子育て中の人も、子どもが大きくなって手を離れた人も、いろんな人たちがともに学ぶことで、まち全体で盛り上がっていきたいですね。ischoolがそのきっかけの場になると嬉しいです」
と、中川が話を結ぶと、会場は今日一番の大きな拍手に包まれました。
参加者の皆さんからは、
「大学へ入ることが学び直すことと思っていましたが、日々いろいろなことから学んでいるはず、という話が印象的でした。学び直しは特別な事ではなく、いつでも思い立ったらできるんですね」
「忙しいことを言い訳にしていた自分に気づかされました。今度こそ、目標を立ててなにか形にしたいです」
「好きなことを学ぶと、新しいつながりが生まれ、世界が広がることが、学ぶことの本質だととても納得。わたしも本気で学ぼうと思いました」
などと感想が寄せられました。
登壇者3人の話を通して、学びたい気持ちや、学ぶことへの期待が大きく膨らむ時間となりました。
ischoolがいよいよはじまります。ともに学び、わたしたち一人ひとりの可能性を広げていきましょう。
(写真:中垣由梨)