“世界一幸せな国”から考える 子育てと教育

レポート

学びクリエイターの奥田です。

6月4日に「“世界一幸せな国”から考える 子育てと教育」を開催。
世界幸福度ランキングでたびたび上位にランクインするデンマークと、日本の子育てや教育の特徴を比べることで、私たちが暮らす日本について知り、この先どんな社会を作っていきたいかを対話しながら考えました。

最初に私から、デンマークの家庭教育や、自然環境を使って子育て支援を行う「森のようちえん」、大学の学部選択などの事例を取り上げて、デンマークで大事にされている「個人を大切にする考え方」とその教育スタイルについて話しました。

デンマークでは、どんなに小さな子どもでも一人の人間として尊重され、子どもであっても、自分がなにをしたいか、どんな想いなのかを表現することを求められるんです。例えば「森のようちえん」では、子どもが大人でもヒヤヒヤするような高い木に登ったり、刃物や火を使ったりすることもありますが、大人は、子どもの選択をサポートします。「危ないから」とか「好ましくない(と親が思うから)」という理由で否定するのではなく、子どもたちが経験を通して学び、決断する力を育むことを大切にしているんです。

続いて、今回のゲストとして甲斐大次郎さんをお迎えし、日本とデンマークの違いについて対話しました。甲斐さんはデンマークで生まれ育った日本人二世。35歳まで現地で暮らし、6年前に来日。現在は生駒で暮らし、一児の父として、家庭では子育てをメインで担っているそうです。日本とデンマークの双方のルーツを持つ、甲斐さんだからこそのエピソードがたくさん出てきました。

印象に残ったのは、「嫌がって服を着替えない」子どもへの接し方。甲斐さんは、子どもが嫌がるのは集中力を切らしているせいだと考えて、一度気をそらして他のことを楽しませたあとに、再チャレンジするなどの工夫をしているのだそう。子どもに理屈を伝えても、なかなか言う通りに動いてくれないですよね。だからこそ、子どもが自分で「着替えたい」と思い、自ら行動してもらうことが大切。そこで、あえて子どもがしたいことをさせるんです。日本だと「早くしなさい!」と言って子どもの行動を強制してしまいがちですが、「子どもの視点で考え促す」対応に納得すると同時に、驚きの声が上がりました。

後半は、デンマークと日本の今の社会と未来について話しました。1960年代のデンマークは、今の日本のように、「女性は家庭を守り男性は外で働く」生活スタイルだったんです。それが今では、性別関係なく自分らしく生きられる社会になりつつあることなどを紹介し、「自分たちの社会を変えるのは自分自身である」と伝えました。
また、甲斐さんからは「デンマークを一方的にうらやましく思ったり、何でもデンマークが素晴らしいという訳ではなく、日本にも優れた面がある。デンマークと日本互いに学び合えるし、日本の素晴らしさをもっと発信していきたい」という熱い思いが伝えられました。

最後に、生駒駅前図書室の入井室長から、今回のテーマに合わせて、北欧・デンマーク・子育て・教育に関する本の紹介がありました。全部で50冊ほどが特集され、参加者の皆さんは興味深そうに手に取っていました。

参加者の皆さんからは、
「一人ひとりの個性を伸ばす教育が本当に必要だと思いました」
「デンマークでは、個人を大切にするということがよく分かりました。参考にしたいです」
「自分自身の子育ての考え方をもう少しゆるめて、子どもの表情や子どもと自分の好きなことを大切にしたいと改めて思いました」
といった感想が寄せられました。

イベント終了後もその場に残って参加者同士で会話をしたり、連絡先を交換するなど、今後につながるような活発な交流が生まれたことが印象的でした。
生駒のまちで、大人も子どもも個人の意思を大切に生きられる社会の実現を目指して、今回のような対話から学ぶ会を今後も開催していきたいと思っています。

学びクリエイター

奥田 陽子
生駒市出身。関西学院大学経営戦略研究科修了(MBA)。
2020年8月から4ヶ月間デンマークの成人教育機関「フォルケホイスコーレ」に留学。
2022年には、フォルケホイスコーレと、デンマーク発祥の森のようちえん、自由教育大学などを視察。対話と社会課題解決への関心を持ち、「生駒ホイスコーレ」の設立を目指す。

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