太田 奈美(おおた なみ)

学びクリエイターの紹介

#旅 #多文化交流

古民家Cottage鹿音の代表。1児の母。伝統文化やインテリア、食文化に関心があり、海外旅行が趣味。結婚を機に韓国で大学講師として9年間働いた後、旅行・自然・伝統文化・交流を通じた癒しの場として「古民家Cottage鹿音」を創り、国内外から年間2,000人を超える訪問客を受け入れている。

7/2(日)に開催した「親子で旅育にチャレンジ」の企画に携わった太田奈美さんにお話をお聞きしました。

―普段は、どのような取り組みをされていますか?

生駒市有里町で一棟貸しの宿「古民家Cottage鹿音」を営んでいます。今年で開業9年目。国内外を問わず年間2,000人を超えるお客様をお迎えしてきました。

当初ゲストハウスとして立ち上げ、7割ほどが海外からのお客さまだった鹿音ですが、開業から5年ほどたった頃に、コテージにリニューアルしました。

海外からのお客さまの大部分はアジア圏からのゲスト。親族や友人、会社の同僚など6~12人のグループで行動することが多く、みんなでゆっくり食事をしたり、旅行中でも団らんの時間を大切にします。そこで、グループ滞在であっても、気兼ねなく過ごせるコテージスタイルの需要があると思ったんです。個室貸しに加えて、棟の全体を1グループだけで滞在できる一棟貸しのプランも設け、さらにもう一棟、貸切専用の棟「2号館」をオープンさせました。

その後、世の中はコロナ禍に。でも、宿泊時に他のグループと接触がない一棟貸しは、大きな影響を受けることもなく、たくさんの人が利用してくださいました。そのスタイルが好評で、日本人のお客様が増える機会にもなったんですよ。

ー「古民家Cottage鹿音」をはじめたきっかけを教えてください。

子どもの頃に記憶をさかのぼると、旅好きだった両親の影響が大きいと思います。

父は学者、母は文芸書の編集者。旅行に行くときは、旅先の地域の地形、風土、特産物、食、その土地出身の作家にいたるまで、幅広く調べてから出かけました。地域の背景を踏まえて旅をすると、新たな視点や多様な気づきに満ち溢れた体験ができたんですよ。両親に連れられて旅するうちに、私も旅行が趣味になり、伝統文化や食文化に強い関心を持つようになりました。

社会人になって改めて海外に留学したときに韓国人の夫と出会い、日本と韓国の遠距離恋愛を経て、結婚。その後韓国へ渡り、大学で日本語を教えていました。教え子たちと関わる中で、韓国の人たちが今の社会に疲れ切っていると感じるようになったんです。激しい競争社会で、多くの人が生きづらさを抱えていることを目の当たりにしました。日本も韓国と同じような状況ですよね。

それで、現代社会には「癒し」が必要だと強く思うようになったんです。今いるところから離れると、悩んでいたことが何でもないことだと気づくことってありますよね。そんな風に、日々の戦いから逃避して、身の置き所を変えることができる「癒しの場」をつくろうと決意。それに、癒しの中で接するその地域の文化や人とは、自然体で素直な文化交流が生まれると思い、夫と一緒に日本で、ゲストハウスをつくることにしました。

―海外も含めてさまざまな土地を訪れたことがある太田さんが、生駒を選んだ理由を教えてください。

文化的な営みが息づく里山が理想の土地で、韓国にいながら日本各地を探しました。北海道や長野にも行きましたが、私たちには、生駒がちょうどよかったんです。

生駒は、自然を大切にする文化や価値観が残り、四季の移ろいを感じられるまち。一見「ふつう」だけど、田舎と都市の良さを併せ持つ、生駒の豊かな暮らしにとても魅力を感じました。

実際、海外からのゲストは、緑の中に住宅が軒をつらねる、この景色に感動してくれるんですよ。宿周辺の有里町や、宝山寺のある門前町を散策して、「ジブリの世界に入り込んだみたいだ」って。坂道のある住宅地、点在する田んぼを横切る線路、道端にたたずむお地蔵さま…住んでいると当たり前になっている風景も、外から見ると、映画のワンシーンのようで他にはない素晴らしいものなんですよね。

―国際結婚をしたり、韓国で暮らした経験があったり。海外出身の方と日常的に交流されている太田さんですが、わたしたちが国際交流をしていくメリットはなんだと思われますか。

自分と違うもの、新しいものを取り入れる力が身につくことが、国際交流の一番のメリットだと思います。

今は、社会が大きく変わっていく時代。変化の激流の中で、新しいアイデアやサービスがどんどん生まれ、時代に合わないものはすぐに消えていきます。一昔前までは、勉強をして学歴をつけて、大企業に就職するのが「正解」でしたが、今は就職したとしても、会社がいつまで続くか先が読めません。自分で道を切り開いていかないといけない世の中です。

そのため、子どもの教育では、生きる力を身につけるために、創造力や探求力を養う必要があると言われています。でも、その方法がわからない大人が多いように思うんです。新しいことを「異質」なものとして、無意識のうちに遠ざけてしまっているんじゃないかな。

海外の人や文化に対しても同じこと。自分が知らないことは、なんとなく怖いから距離を置いてしてしまうんですよね。でも、実際に海外を訪れ、現地の人と仲良くなると、実は私たちと同じ人間だって気がつきます。同じように家族や友だちを大切にし、温かい感情がある。海外の人と関わることで、自分とは違う、でも、根本にある同じ価値観や文化を知り、受け入れる経験ができるんです。

ー太田さんの今後の目標を教えてください。

鹿音という場所を、地域に入っていくための「縁側」のような存在にしていきたいんです。みんながくつろぎながら交流ができる縁側のように、この土地に暮らす人と出会い、地域に入り、日常に身を置くことができる、そんなきっかけの場になることが目標です。

鹿音にはエンターテイメントや、派手な観光地があるわけでもなく、地域とのつながりが何よりも重要。だから今も、地道に信頼を積み上げているところなんですよ。今後も地域の一部であることを大切にしながら、この土地の営みの中に旅人を受け入れていきたいです。

太田奈美さんが企画した授業
7/2(日)親子で旅育にチャレンジ

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