岩城 はるみ(いわき はるみ)

学びクリエイターの紹介

#子育てしやすい社会へ #ジェンダー

生駒市在住、アクティビスト。元高校教諭で二児の母。ベビーマッサージ教室やカメラ教室「KOJIKA no Ouchi」を展開するとともに、「子育てしやすい社会へ」をコンセプトとした「Alright Baby」プロジェクトを手がける。子育てにおける様々な社会問題と向き合う中で、その根底にはジェンダー問題が深く関わっていると感じるように。昨年4月から大学院で子育てとジェンダーの研究をスタート。子育て応援メディアでジェンダーについてのコラム執筆もしている。

2/22に開催した「あなたの発信は大丈夫?ジェンダー表現を考える座談会」を企画された岩城はるみさんに話をお聞きしました。

―普段は、どんな活動や講座をされていますか。

2012年から、赤ちゃん連れの方を対象にしたベビーマッサージやカメラの教室「KOJIKA no Ouchi」を運営しています。レッスンをすることが目的ではなく、赤ちゃん連れでも安心して出かけられる場所を増やしたくてはじめました。

また、2017年には「子育てしやすい社会へ」をコンセプトにした「ALRIGHT BABY」というプロジェクトも立ち上げました。これは、子育てを社会全体で担う雰囲気や仕組みをつくることを目指す取り組みで、代表的な事例としては、子育てを見守っているということを意思表示できるステッカーを作りました。ステッカーを身につけることで、小さな子どもを連れた人に「赤ちゃんが泣いても大丈夫だよ」「ベビーカーでも大丈夫だよ」という、子育てを一緒に見守りたい気持ちを伝えることができるんです。

他にも、2022年からは子育て中のお父さんの集い場「plat」の共同代表として父親を対象にしたイベントを企画したり、大学院に通ってジェンダーについて研究したりしています。

―岩城さんの活動は多岐にわたっていますね!それぞれの活動にはどんな共通点がありますか。

そうそう。いろんなことをしているから、「なにをしているかわかりづらい」とよく言われてしまうんです。でも、どの活動も「子育てをママだけのものにしない」こと、「子育てのしんどさを社会全体で分け合う」ことを意識しながら進めているんですよ。

ー活動をはじめたきっかけを教えてください。

私の子どもたちが小さかった頃は、赤ちゃん連れで気兼ねなく出かけられる場所が今よりも少なかったように思います。私自身も子育てが辛い時期があったので、「しんどいお母さんの息抜きの場を作りたい」と考え、“お母さん”を応援するために「KOJIKA no Ouchi」を立ち上げました。

でも今から7年ほど前、保育園の待機児童問題が社会的に可視化された時に、古市憲寿さんの著書「保育園義務教育化」を読んで、子育て支援の価値観がガラリと変わったんです。本には、今の日本の社会では子育ての責任が“お母さん”にばかり背負わされていることが淡々と書かれていました。“お母さん”のための場所をつくっていた私にとって、自分の中の前提を覆されるような内容で。「KOJIKA no Ouchi」も、育児は“お母さん”がするものだという「常識」を強化することに加担しているのではないかと考えるようになりました。

それからは自分にできることとして、男女を問わず子育てをしている身近な人たちと関わりながら、社会そのものを変えていくためにアクションすることを大切にしています。

―大学院でジェンダーについて研究をはじめた理由を教えてください。

日本の子育てに関する社会問題は、ジェンダーの問題と密接に関わっていると考えるようになったからです。

実は私は元々、ジェンダーについて無関心で、子どもを産むまでは「女だって頑張れば、勉強でも仕事でもなんでもできるじゃん」と思っていました。でも、子育てしてはじめて“お母さん”であるというだけでこんなに肩身の狭い思いをしなければならないのか、我慢することが当たり前になるのか、人間として許されるストライクゾーンが狭くなるのかと痛感したんです。

そうすると、そもそも“お母さん”になる前にもたくさんおかしなことがあったんじゃないかって気づくようになって。過去には気にも留めなかった「女性だから当たり前だと思って受け入れてきたこと」が、ライフステージが上がるほどに積みあがってきて、周囲の目からはもちろん自分自身が思い込んでいた「常識」からも苦しめられていたんです。表面上「お母さん、息抜きしてまた子育て頑張ろうね」って言ったって、その場しのぎにしかならないと思うようになって。根本的な解決のネックが私にとってはジェンダー問題を解決することだったんです。

少子化にしろ待機児童問題にしろ、子育てに関わる問題がなかなか解決しない背景に、「子育ては母親がするもの」というどこか他人事な空気があると思うんです。解決するための政策を考える人たちにとって自分事じゃないんですよね。

女性の社会進出が当たり前になった今、男性の家庭進出がもっともっと当たり前にならないと、色んな歪みが解消されないと思うんです。家事育児を自分事として考える男性が増えつつある今、そんな皆さんと一緒に、父親が当たり前に子育てに参加できる社会にしていくために、ジェンダー研究を続けていきたいです。

―「子育てしやすい社会」の実現ために、私たちができることを教えてください。

すぐにできることとして、「小さいお子さんを連れた人に温かく接すること」がオススメ。子連れででかけるときって、「子どもが泣いて迷惑をかけたらどうしよう」「ベビーカーが電車の中で邪魔にならないかな」って、親たちはなんとなく肩身が狭い思いをしているから、周りに受け入れられていることがわかるだけで、すごくホッとすると思うんですよね。私たちから、「赤ちゃん可愛いですね」「泣いても大丈夫ですよ」と声をかけたり、笑顔を見せたりするだけで、街全体で子育てを応援しているという気持ちが伝わると思います。

また、世の中や社会の仕組みに目を向けてみることも大切だと思うんです。「“当たり前”とされているものは、だれにとっての当たり前なのか」「不自由をだれかに押し付けていないか」というように、まずは前提を疑ってみてほしいです。そして気づいたことがあれば、小さくてもいいので声をあげてみてください。一人ひとりが行動することで、少しずつ社会はよくなっていくと思うので。

―岩城さんの今後の目標を教えてください。

10年ほど前に「KOJIKA no Ouchi」をはじめた頃と比べると、子育てに主体的に関わる男性が増えているのを感じています。その動きをさらに加速させるために、地域で子育てをする“お父さん”たちと一緒に、「plat」のような父親たちの交流の場所をもっとつくっていきたいです。また、身近な問題を解決するための活動だけでなく、広い視野で問題を解決するための研究にも力を入れて取り組んでいこうと思っています。

自分にできることを一つずつ積み重ねて、もっと子育てしやすい社会をつくっていくこと、これが私の目標です。

岩城はるみさんが企画した授業
2/22(水)あなたの発信は大丈夫?ジェンダー表現を考える座談会

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