#教育 #大人の学び #デンマーク #対話 #フォルケホイスコーレ
生駒市出身。関西学院大学経営戦略研究科修了(MBA)。
2020年8月から4ヶ月間デンマークの成人教育機関「フォルケホイスコーレ」に留学。
2022年には、フォルケホイスコーレと、デンマーク発祥の森のようちえん、自由教育大学などを視察。対話と社会課題解決への関心を持ち、「生駒ホイスコーレ」の設立を目指す。
2/23に開催した「“世界一幸せな国”に学ぶ 北欧ライフスタイル」を企画された奥田陽子さんに話をお聞きしました。
―普段は、どんな活動や講座をされていますか。
デンマークの成人教育の学校「フォルケホイスコーレ」を奈良につくるために、デンマークの魅力を伝えながら学習体験ができる場を企画・運営しています。
例えば昨年の夏には奈良県天川村で、フォルケホイスコーレのプログラムを参考にした合宿を5泊6日で開催したんですよ。デンマークから講師を招いて、デンマークの文化や教育を参考にして、暮らしの中に取り入れていきたいアイデアをみんなで考えました。また、天川村の慣習や歴史を学び地元の人と交流することで、この地域ならでは特長を知って愛着を深める時間にもなりました。
―フォルケホイスコーレについて教えてください。
フォルケホイスコーレは、デンマークでつくられた大人のための教育機関で、国内に70校ほどあります。17歳半以上ならデンマーク人でなくてもだれでも入学することができ、全寮制。日本の学校とは違って入学や卒業の試験はなく、単位もないんです。
学校それぞれに芸術、音楽、健康、手芸など専門としている分野があり、一部例外はあるものの授業は基本デンマーク語。 デンマークの歴史や地域、文化を必ず学ぶのも特徴です。また、異なった意見を持つ人たちが話し合うことで意思決定する「民主主義」を学ぶ場所として元々は作られたので、先生から教わるのではなく、学生同士の対話を通して学びを深めることを大切にしているんですよ。
ー奥田さんがフォルケホイスコーレを知ったきっかけを教えてください。
フォルケホイスコーレとの出会いは、ビジネスの手法を社会の課題解決に活かしたいと思って仲間と共に参加したビジネスコンテストでした。
その頃、母の故郷である天川村をもっと活気ある場所にしたくて、よく仲間と共に現地を訪れて合宿をしたり過疎化を止めるための企画を考えたりしていたんです。それで、ビジネスコンテストにも挑戦して、「天川村に“高校”をつくろう」というプランを提案しました。“高校”といっても、よりよい社会のためのアクション を学ぶ、ちょっと変わった学校です。結果的にそのプランは採択されなかったんですが、自治体の人からフォルケホイスコーレの存在を教えてもらいました。「あなたが作りたいのは学び合いの場所でしょう」と。
その後すぐにデンマーク旅行に出かけ、現地のフォルケホイスコーレを見学させてもらったんですよ。美しい街並みや自然の中で、学生たちが生き生きと学んでいる様子を目の当たりにして、私が目指している場所だと確信。まずは自分が体験してみようと思い、仕事を辞めてフォルケホイスコーレに4か月間留学しました。
―留学していた時のことを教えてください。どんな生活でしたか。
2020年8月から4か月間現地で学び、学校の敷地内にある寮で暮らしました。私はデンマーク語の初心者ですが、日常会話レベルの英語ができたので、なんとか生活できましたよ。
授業のある平日は、午前中にデンマーク語を習い、午後からは自分の興味のある科目を選択して受講。授業といっても、先生は教えるというよりきっかけを作る役割なんです。例えば音楽のクラスでは、一人1台ギターを渡されて、先生はコードを2,3種類教えてくれるだけ。でも、クラスメイトと工夫して教え合うことでだんだんと弾けるようになっていきました。一方的に先生が教えるのではなく、学生が自ら考えて学んでいく過程を大切にしているんですよね。
授業の後や土日は自由時間なので、近くの森に散策に出かけたり、友人と図書室で映画上映会を企画したり、観光に行ったりしました。4か月のプログラムが終わる頃にはすっかりこの生活に馴染んで「あー日本に帰りたくないな」って思ったぐらい、とても充実した時間でした。
―「フォルケホイスコーレ」をつくりたいと思っているのはなぜですか。
教師だった父親に、「なんでも自分で決めていいんだよ。失敗したときの責任は親がとるから」と言われながら育ったんです。自分で決めて行動したことは、どんな結果になっても納得感がありました。自分で決めたことだから、失敗をしたとしても反省して次へのチャレンジができました。“失敗”が次の行動の糧になったんですよね。 そして、自分自身の経験から、この繰り返しこそが本当の意味での「学び」だと考えるようになりました。
私は、「自分の幸せは自分で作り出せるはずだ」と信じているんです。日本では、親や先生が失敗しないようにレールを引いてくれることが多いですよね。 決められたことに従うのは楽チンだけど、自分で考えて選択してきた人生の方が幸せかもしれません。
だから、自分が本当に望むことを考える力、異なった意見を持つ相手の話を聞く力、そして自分がどう行動するかを決める力を学び合いの中で育んでいける、フォルケホイスコーレのような場所が私たちには必要だと思っているんです。
―今後の目標を教えてください。
今の日本は先行きが不安で、どこか暗い雰囲気に包まれているようですが、一方で変革をのぞむ声もあがっています。そんな時だからこそ、自分たちでしっかり考えて、未来の在り方を選択する力を身につけたいですよね。よりよい社会のための一つの手段として、フォルケホイスコーレでの学びを通して、「自分たちの幸せは自分たちの手で作る」という考えを持つ人を増やしていくことが目標です。
奈良県の天川村、生駒、曽爾、宇陀にそれぞれフォルケホイスコーレを立ち上げようと計画しています。奈良は古から歴史が続く土地。そんな由緒ある地域で、日本の成り立ちや文化を改めて学び、これからの社会を考えていく場をつくっていきたいと思っています。
奥田陽子さんが企画した授業
2/23(祝)“世界一幸せな国”に学ぶ 北欧ライフスタイル