学びクリエイターの岩城です。
2月16日、「性の多様性に目を向けてみよう」をオンラインで開催。『性の多様性ってなんだろう?』(平凡社)の著者である埼玉大学の渡辺大輔先生と、トランスジェンダー当事者として講演活動や居場所作りなどをされている定政輝さんをゲストにお迎えし、トークセッションを行いました。
当日はトークセッションに入る前に、参加者の皆さんと共有しておきたい基本的な知識や、「性の多様性」について考えるきっかけとなる動画を、渡辺先生から紹介していただきました。
その中で、あるストーリーから登場人物の関係性を推察するゲームがあったのですが、普段ジェンダーバイアスに敏感でありたいと思っている私自身にも、先入観があることに気づかされました。「家族」というフィルターをかけた途端、いつの間にか同性パートナーやトランスジェンダーの存在を想定から外して考えてしまっていたのです。
その後のトークセッションでは、「性に関してモヤモヤしたこと」についてみんなで語り合いました。
定政さんの経験談や渡辺先生が紹介された動画からは、多くの子どもは親を悲しませたくないし、親の喜ぶ行動を取りたがるのだと分かりました。だからこそ、子どもは自分自身の悩みについても、なかなか親に相談できないもの。一方で親としては、子どもには本人の望む選択・生き方をしてほしいと願っていて、子どもが一人で悩んで苦しむ時間は少なくあってほしいと思っています。
定政さんがお母さんにカミングアウトする際には、「待っててくれてありがとう」の言葉を伝えたのだそう。親を想うからこそ悩みを言い出せないという子ども側の気持ちも、できるだけ早く悩みを聞いてあげたいという親の気持ちもどちらも分かるだけに、定政さんのその言葉がとても心に響きました。
お互いを大切に思い合う親子だからこそ、簡単には伝えることができないこともあると思います。それでも、伝えたいタイミングが来たときに安心して伝えてもらえる親でいられるよう、自分自身に潜む無意識の偏見(性にまつわるものに限らず)を少しずつでも学び落としておきたいと心から思いました。
最近では「LGBTQ」という言葉を聞いたことがある人がほとんどだと思いますが、一方でそこにカテゴライズされない側には名前も付けず「標準化」してしまっている部分がありますよね。また、性の多様性に注目しみんなで考えていくことはもちろん大切ですが、一方で「この人はトランスジェンダーの人」「この人は同性愛の人」と、SOGIE(性的指向・性自認・性表現)にばかり目を向けそこで線引きしてしまうと、その人が何に興味を持っているのか、どんなことが得意でどんな夢を持っているのか、沢山あるはずのその人の情報をシャットアウトしてしまうことになります。
性にまつわるあれこれは、たくさんあるその人の個性のうちの1つでしかありません。「女性らしさ」や「男性らしさ」だけじゃなく、「自分らしさ」にすら囚われなくていいのだという渡辺先生の言葉が、私にはとても印象的でした。
参加者の皆さんからは、
「世の中にはカミングアウトをしていない人もいるので、今回の話は人とのコミュニケーションの中で役に立つ内容だと思いました」
「子どもとの関わり方に生かしていきたいです」
といった感想が寄せられました。
「性の多様性」は、特別な存在としてLGBTQに配慮したり支援したりすることではなく、多様な性を生きる私たち自身のことだということが、参加者の皆さんと共有できていたら嬉しいです。
学びクリエイター
岩城 はるみ
生駒市在住、アクティビスト。高校教諭として働いていたが、第二子出産を機に退職し、子育て支援事業をスタート。「子育てしやすい社会へ」をコンセプトとした「Alright Baby」プロジェクトを手がける。令和3年4月から大学院で子育てとジェンダーの研究をはじめ、子育て応援メディアでジェンダーについてのコラムを執筆するなど精力的に活動している。
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