ちっちゃな焚き火プロジェクト

レポート

2月17日、2月23日に「ちっちゃな焚き火プロジェクト」を開催。1日目にたき火の世話役となる「火守(ひもり)さん」の事前講習を行った後、2日目には生駒駅前の広場でたき火をしました。

【1日目】「火守さん」の事前講習
2月23日に向けて、たき火の管理や空間づくりのサポートをするボランティアスタッフ「火守さん」が集まりました。総勢24名。世代も住んでいる地域もさまざまな皆さんですが、共通しているのは「たき火が好き」だということ。

まず、今回のプロジェクトの発起人で市内に住むデザイナーの小林牧子さんと、コミュニティデザイナーの中脇健児さんから「生駒に住んでいる人たちがゆるく集い、交流できる場をつくりたいと考えたときに、たき火がいいなと思ったんです」と立ち上げの経緯が伝えられました。

そこで、長年にわたって人が集う場「共有空間」の可能性を探ってきたアーティストの小山田徹さんをゲストに迎え、人が集う場としてのたき火の魅力について話をお聞きしました。

小山田さんは美術家でパフォーマンスグループ「ダムタイプ」の創設メンバー。仲間と世界中でアートパフォーマンスを行う中で、親友の一人がHIVに感染。当時はエイズに関する世間の理解が乏しく、エイズ患者は激しい差別や偏見にさらされていました。親友のためにもエイズによる差別をなんとか解消しようと、パフォーマンスを通して世の中に訴えたものの、社会はなかなか変えられないことを実感。

「正面から正論をぶつけても人は動かない。強い想いから生まれた正義は時に暴力的になってしまう」と気づいた小山田さんたち。人の相互理解をはかるためには多様な人が対話を重ね、さまざまな価値観の中で考え続けることが必要だと思い至ったのだそう。

そこで、人が自然と集まり対話が生まれる場づくりの模索をはじめ、そうして仲間とともに立ち上げた「Weekend Café」、コミュニティカフェの原型「バザールカフェ」などの取り組みを、当時の写真をまじえながら紹介してもらいました。

「バザールカフェではできるだけ自分たちの手で作ることを意識し、建具づくりやカフェのスタッフなどもみんなで担いました。空間の中にほどよい労働を作り出し、だれもが役割を持つことで、“お客さん”から“コミュニティの一員”になれるんです」

その後もさまざまな共有空間の実践を経て、ついにたき火の持つ可能性にたどり着いた小山田さん。現在は各地でたき火を用いたプロジェクトを行っています。
「たき火を囲むと知らない人との間でもぽつりぽつりと会話が生まれ、話しているうちにお互いのバックボーンが見えてくる。たき火はそうやって人と人をつなぐだけでなく、薪をくべないと消えてしまうため、たき火の周りではだれもが役割を持てるという特徴もあるんですよ」

また、たき火は非常時に灯りやストーブの代わりにもなるので、地震の被災地でも重宝されるんです。そのため小山田さんは、防災訓練の中でたき火をして火起こしや火の管理を学ぶことも勧めているのだそう。

最後に、
「火守さんの存在がたき火ではとても重要です。場を仕切るのではなく、たき火を囲んだ人たちが心地よくそこにいられるようにほどよく関わってくださいね」
と火守さんの心構えを教わり、小山田さんの話は締めくくられました。

講義のあとは屋外で小山田さんと中脇さんよりレクチャーを受けながら、みんなでたき火を体験しました。

数名に分かれて、火を起こしに挑戦。折り畳み式の小ぶりな器具の中に薪をくべ、新聞紙を用いて点火すると、あっという間に火が起こりました。思っていたより簡単で、火守の皆さんも驚いた様子でした。

その後はたき火を囲みながらそれぞれ自由に過ごしました。

【2日目】生駒駅前広場のちっちゃな焚き火
いよいよ、生駒駅前広場のたき火当日。火守さんたちが広場に集まり、手際よくたき火の準備を進めました。

たき火がはじまると、通りがかりの人たちがたき火に気づいて足を止め、広場に集まってきました。

親子連れやお出かけ帰りの人など、いろんな人が火守さんとともにたき火を囲みました。どのたき火でも自然と会話が生まれ、心地よい空間が広がっていきました。

中には、薪割りに挑戦し各たき火に薪を配り歩く子や、世代を超えて語り合う若者とシニアの姿も。ここに偶然居合わせた人たちが、思い思いにたき火を楽しんでいる姿が印象的でした。

たき火に参加した人からは、
「たまたま通りがかったから参加したけど、本当に良い時間を過ごせました」
「まさか駅前でたき火ができるなんて思っていなかったから、今日この場に居ることができて幸せです」
といった声が聞かれました。

あっという間に終わりの時間となり、惜しまれつつも今回のプロジェクトは幕を閉じました。

プロジェクトに携わった火守さんからは、
「火を囲むとそこはかとなく楽しいし、ゆるやかに交流が生まれていて、素晴らしい空間ができるんだなと思いました」
「たくさんの子どもたちが楽しく過ごす姿を見れたり、自分とは異なる世代のお父さんお母さんたちと話せたりと、新しいつながりができたことがとても嬉しかったです」
「たき火をまちの色んな場所で気軽にできるようにして、日常の一部に取り入れたいです」
などと感想が寄せられました。

今回使った薪は、生駒の森林をボランティアで整備している「いこま宝の里」の皆さんに提供いただきました。たき火をきっかけに多様な人が関わり、新しいつながりが世代を超えて生まれた「ちっちゃな焚き火プロジェクト」。今後もこのプロジェクトが続いていくことで、市内の資源や人の循環が広がっていくことを願っています。

※なおこのプロジェクトは、市民活動推進センターららポート「BASE生駒」とischoolとの共催で実施しました。

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